4話 「死神と傭兵はかく語りき」(前編)
そろそろおやつの時間ですし、パンケーキでも食べませんか?と彼女は言った。
確かに、空を見上げれば。
あの頃より大きくなった太陽も、天頂から大分傾いてきた頃合い。
そろそろ小腹の減る時間だろう。
―――しかし、パンケーキか。材料はまだ残っているのか?
「安心してください。私の木の実をこう、粉末にすればいけます」
いけるのか。
「いけます。木の実のパンケーキとか食べたことありますから」
そっかー。
.........え、神樹の実とかそんな聖遺物級の代物をパンケーキにするのか?
「はい!パンケーキ食べたいです!なのでこれでなんとかお願いします!」
あ、作るの私なのな。
というわけで、焼けたぞ。木の実のパンケーキ。
「おぉ......すごい。本当にパンケーキです」
いや、やれといったのはゆぐ殿ではないか...。
「ではいただくとしましょう。ええと、はちみつがないので...」
おい、まさか。おい。
「私の樹液!」
......いや、当の本人が良いというなら、まぁ、良いんだが...。
「美味しいです!さすがあでりーさん。相変わらずの料理の腕前ですね」
いやまぁ、なんだかんだ料理を趣味にしてから長いしな。
呟く。
目の前でもきゅもきゅと頬を膨らませてパンケーキを咀嚼する彼女の耳には届いていないようだが、実に幸せそうに目を細めている。
ま、作った甲斐があったということだな。
ぼやきながら、私もパンケーキを口に運ぶ。
ふわり、と広がる木の実の香ばしさ。樹液の甘い香りもあいまって、なかなか絶品に仕上がっていると自画自賛したい。
「ふぉれで、そのあとふぉうしふぁっふぁのふぇふか?」
せめて飲み込んでから喋ってくれ。何を言っているのかさっぱり聴き取れん。
入れ歯を忘れたおばあちゃんか貴女は。
「...んっ。それで、そのあとどうなったのですか?」
そのあとか。
ええと、確かこのあたりに...
「御免!」
ばーん、といい音を立てて酒場のドアを開け放ったのは、なんというかいつもの顔である。
身の丈程もある剣を背負った傭兵のロンが店に入ってきた。
こんばんは、とあちこちから声がかかる。
豪快かつ、傭兵と言う仕事柄からは考えられないほどここの住人に慕われている彼は、丁寧に一人一人に挨拶をしながら、カウンターの内側に立っていた私の正面に腰掛けた。
「随分とご無沙汰にしておってすまんな!おや、今日はあでりー殿が食事当番なのだな!」
いつも快活な笑みを浮かべているロンは、今日も相変わらず、機嫌がよさそうに笑っている。
彼がこの酒場にたどり着いてから、もう随分と経っただろうか。
始めこそ、そのがっしりとした体格や豪快な性格に若干距離を置いていた酒場の面々も、彼の意外な繊細さや、周囲に気を遣う性格を知るにつれ、心を許すようになっていった。
始めこそ、大きな音を立ててドアを開け放つたびに数名がびくっとしていたが、今ではその音が「あ、ロンさんが来た」というある種の合図になっている。
「今日は店長代理殿が仕入れのために遠出していてな。代わりに私が、というわけだ」
きょろきょろ、と店長代理の姿を探す彼に、布巾で手をぬぐいながら声を掛けると、彼はにかっと笑った。
この御仁には、快活な笑みが実に良く似合うのだ。
「相変わらず、ティポ殿は忙しいのだな」
「のようだな。ま、ここはよく食い、よく飲む連中が多い。仕入れも大変なのだろうよ」
言いながら振り返ると、厨房の隅には色々な食材が山と積まれているのが目に入る。
一体、これだけあちこちから買い集めて大丈夫なのだろうか。
しかも、結構良い物を買ってきている。
目利きの成果なのだろうが...。
こんなに買い込んで、きっちりと使い切るあたり、底が知れない。
「それでは、食事と酒を頼みたいのだが」
よいしょ、と背中に吊るした剣を脇に置きながら、彼は言った。
「ん、あぁ。承知した。何にしようか?」
「肉を頼む!酒はきつめで!」
にかっと笑って、相変わらず豪快な注文をしてくる。
基本的に何を出しても文句を言わず、美味い美味いと食べてくれる彼だが、そんな彼が一番いい顔をするのは繊細な料理よりも、豪快な味付けで量も豪快なものだ。
そう言うものも、また野趣があってよいのだという。
さすが、根っからの傭兵だ。
「またざっくりとした注文だな。...では用意するから少し待っていてくれ」
まずは酒から、かな。
―――おっと、言い忘れていた。
「おかえり、ロン殿」
そう言うと、彼は顔をぱあっと明るくして、いつもの快活な笑みを見せた。
「ただいまだ!あでりー殿!」
「ほう?それでは例の討伐依頼は片付いたのか」
料理と酒をロンに出した後、自分の分のグラスを持ってカウンターを出て、隣で仕事の話を聴かせてもらうことにした私は、手の中で琥珀色の液体を揺らしながら頬杖をついていた。
「左様。なかなか歯ごたえのある相手だったが」
「まぁ、ロン殿だものな。あまり心配はしておらんが、深追いはするなよ」
「ははは!傭兵というものは引き際を弁えてないと呆気なく死ぬからな!そこは安心してほしい」
この酒場の中でも有数の実力者は豪快に笑う。
物心ついたころから戦場に身を置いていたものの話というのは、案外面白いものだ。
傭兵は常に危険な戦いの中に生きている、とは云うが。
戦場で生き残ってきたものの話というのはいつだって勝者の話だ。
私の持論だが、敗戦を経てもなお生き延びる奴というのは、それだけで勝利していると言えるのではないかと思っている。
誇りも何も、死んだらおしまいだ。
だからこそ、生き延び続ける傭兵の話というのは、泥臭いが、しかしスリルと冒険に満ちていて。
しかして、この場で語っているという事は無事に生き残ったのだと安心して話を聞くことができる。
「成程な。それが生き残るための秘訣か」
「然り。深追いなどと、これだけ戦歴を重ねた今になっても恐ろしい。戦況を見極め、危険を見据え、そして何が何でも生きて帰る。これが出来ん奴は、たとえ凄腕だとしても三流もいいところだ」
「なるほどな。強く、狂っていて、そして運がいい変人。それを人は...」
私が言えば、彼は深くうなずいて言葉を続ける。
「そう、勇者と呼ぶのだな。絶望的な戦いであろうと一歩も引かず、常に勝利し続ける。ある種、我から見ればそれは狂人が何かの間違いで生き残ってしまったにすぎんがな」
なかなか面白い話だ。
だからこそ、物語になるし、だからこそ、滅多に現れる者でもないということか。
「やあ、二人とも」
話の切れ目を見計らったかのように、するりと私の隣に腰を下ろしたのは、黒装束にフードの男性。黎だった。
「これは黎殿。こんばんはだ」
「や、黎殿」
彼がこうした話に混ざってくるのは珍しいな、と思いつつ、グラスにウィスキーを入れて差し出してやる。
「ん、ありがとう。ウィスキーか?」
「ああ。極東の酒蔵が作った物だそうだ。雪華殿が仕入れてきたらしい」
そう言うと、彼は口元へグラスを持って行き、すんすん、と香りを嗅ぎ始める。
「......へえ、いい香りじゃないか。酒の目利きは雪華には敵わないな」
「酒の良し悪しが分かるようになってきたか」
「ははは!良い事ではないか。どれ、では折角だ。乾杯でもしようではないか!」
上機嫌でロンが笑う。
私たちは、背後の騒ぎをよそに、そっとグラスを重ねた。
「それで、こちらに来るのは珍しいな?どうかしたのか?」
ちびちび、とグラスに口を付けては味わっている黎を横目に捉えつつ、話を振る。
きつい酒精にほんのり頬を染めているが、苦いような顔をしているわけでもない。
随分とまぁ、飲みなれたものだ。
「ん......いやな、少し騒ぎ疲れただけだ。たまにはゆっくり飲むのも悪くないだろ?」
ばさり、とフードを外しつつ、にやり、と口の端を吊り上げ、軽くグラスを振った彼が笑う。
なかなかサマになっていて、ここに来たばかりの頃から彼も成長しているのだなあと思わされる。
どちらかというと、600歳を相手に成長を見守る大人の目線になってしまうのは申し訳ないとは思うのだが。
「はは、大人になったじゃないか」
「そういえば一時期、思春期とか呼ばれておったが。もう卒業か。あっという間だな」
ロンが笑う。酸いも甘いも噛分けてきたこの傭兵から見れば、この死神もまだまだ子供のようなものらしい。
「ロンまで...勘弁してくれよ。思い出すと恥ずかしい」
アルコールによるそれではなく、羞恥によるそれで、今度は耳まで赤くなった。
こほんと咳ばらいをすると、ふるふると顔を振るとなんとか冷静に戻ったようで、またちびちびと飲み始める。
温かい目、というか。
彼は恐らく傭兵団の新人にも、似たような眼を送っていたのではないだろうか。
無言でグラスを傾けていた。
酒場の喧騒から遠ざかったかのように、私のくすくすという押し殺した笑いと、からん、ころんと。グラスの中を踊る氷の音だけが、3人の間に聞こえていた。
しばらくして。
ふと、ロンがおもむろに切り出した。
「たまには大人の話に混ざる、というのも楽しかろう?」
「年齢的には俺はロンより上の筈なんだがなぁ」
はー、と溜息をつき、ゆるゆると首を振る。
「ははは!年を重ねるだけでは大人にはなれんのだ。大人の苦みを知らんとな!」
「ったく...。いや、まあ。俺もロンやあでりーに少しは近づいたってことなのかね」
「まだまだ青い。あと5千年ぐらいは我慢するといい」
「あでりー基準で話をされると時間間隔が狂うな」
「ははは!佳い女の話は黙って聞いておけ、それが大人の「いい男」の処世術というやつだぞ!」
「はー、参った参った。お前たちにかかると、俺もまだまだひよっこ扱いかよ」
額に手を当て、勘弁してくれとぼやく。
「そういえば気になっておったのだが。黎殿は生まれたときから死神として生まれたのか?」
「ん?あぁ...俺は...」
うーん、と。
語るべきか、語らぬべきか。
腕を組んで考え始めた彼に退路を出してやる。
「言いたくなければ言わんでも構わんぞ」
そう言うと、少し面食らった顔をしてから、首を振った。
「...いや、もうこの際だ。別に隠すような事でもないしな。話すよ」
「あー、なんだ。振っておいてすまんが...無理にとは言わんからな。話せる範囲で頼むぞ」
少し気遣うようにロンが言うが、黎は「大丈夫だ」と答えた。
折角だし、二人には知っておいて欲しい、と。
「...そうだな、あれは600年ほど、昔の話になる」
とある街に、一人の子供が生まれた。
名を、レヴィット・シーク・イムリア。
とある一般家庭に生まれた、少年だった。
「普通の家庭に生まれた、普通の人間の子供...だったはずなんだ」
しかし、そうはならなかったのだと彼は語る。
「ええとな、俺が生まれると同時期ぐらいかな。そのころから、家の周辺で、おかしな事件が起き始めたらしい。」
ほう?とロンが呟く。
「おかしな事件、というと?」
「そうだな、例えばポルターガイスト、例えば人魂が浮いている。例えば赤ん坊の鳴き声が聞こえる...そういった、怪奇現象の類だ」
「それが貴殿の家の近辺で頻発したと?」
随分と、街の人間も気味悪がったらしい。
何が起きているのか、誰にも分らなかったからな。
「だが、家族がその現象を不気味がって引っ越しをしようとしてな。俺を連れ出した際、俺がいるところで常に事件が発生したおかげで、元凶が誰であるのか、ハッキリしてしまったんだ」
そうなれば、当然。
周囲からの非難の的になるだろう。
「始めこそ家族も、俺のことを庇った。当然だろう、本当に俺が原因なのかどうか、誰にも分らなかったのだから」
だが、その家族も。
常に周囲から非難され続ければ。
「この子さえ居なければ」
そう思っても仕方がないのだと、彼は語った。
「馬鹿な!親が子を守り切らなくてどうするというのだ!」
ロンが激昂する。
義理堅く、人情味のある人物だ。そんな身勝手な話は許せないのだろう。
しかし。長く、永くヒトというものを見続けてきた私には、それが分かってしまう。
「そうするだろうな」ということが、わかってしまう。
「結局、家では居ない者として扱われた。追い出されなかっただけ、捨てられなかっただけまだマシだと、今では思う」
「......そのような」
「そして俺は家を出ることにした。俺を捨てないでいてくれた家族に、これ以上苦しみを味わわせせたくはなかったからな」
「ほう、自ら家を出たのか?9歳...となると、生きていくのも相当に困難だっただろうに」
私の言葉に、彼は「まぁな」と頷いた。
「しかし、なんとか森で一人生活していくことはできたんだ」
「逞しいな」
「ふむ!男児たるもの、逞しく生きねばならんからな!」
ロンが鼻息荒く、腕を組んでうんうんと頷く。
女児であった私には分らない感覚なのだろうが、どうやら通じるものがあったらしい。
「だが、12歳の頃に転機が訪れた」
運悪く噂を聞きつけた研究者の連中に捕まってしまったのだという。
潤沢な魔力、特殊体質...。
研究の題材には、うってつけの素材だったのだ。
ロンが苦い顔をして黙りこくる。
詳細は聞かずとも、予想は付く。
「そして、実験に次ぐ実験。その果てに、俺の人格は分断された」
「人格が?」
「あぁ。まぁ、分断されたといっても、もう一人の友達...要は、見えない友人がいきなりできた、みたいな感覚だった」
当然、何もない虚空と一人会話する姿は、相当に異常だと感じたことだろうな、と彼は苦笑する。
「なるほど、ルナ殿...とは似ているような、似ておらんような...」
腕を組んだまま、眉間にしわを寄せて考え込むロン。
あまりこうした姿を見かけないので、少し新鮮だった。
「んー...似たようなものだと思うぞ。ルナも、俺と同じで本来一つであったものが分離した状態だったからな」
ただ、もう一人の「彼」との会話も、日に日に減っていき、遂にはなくなったのだという。
「人格が消滅したのか?」
私の問いに、黎は首を振った。
「いや...その時はまだ居たんだ。だが、ある日、黒フードを被った、骸骨みたいな奴が俺のところにやってきてな」
「骸骨?」
「分かりやすい、死神の姿だった」
「納得した。イメージは付きやすいな」
「露骨に壁をすり抜けてきていたしな。それで、そいつは言ったんだ。「俺と同じ力をくれてやる。代わりに、もう一人のお前を差し出せ」と。」
「それで、差し出したのか」
「不審に思ってはいたんだが...壁を抜けてきたところを見て、もしかしたらここから出られるかもしれない、と魔が差したんだ。今となっては、後悔しか残っていない」
そして、力を手に入れた瞬間、全てを悟ってしまったのだという。
「誑かされたのだと、気付いてしまった。頭に血が上った俺は、その黒フードを始末してな。必ず「あいつ」を助けるのだと誓った」
ぎゅっ、と。
悔しそうに拳を握りしめて彼は言った。
「ふむ。それが死神になった切欠だったのか」
納得した、とばかりに頷くロン。
「その通りだ。そのあと、必死に探したんだが...結局見つからなくてな。2週間も彷徨った挙句、死にかけているところをルシファーに拾われたんだ」
「あぁ、それでルシファー殿と繋がったわけか...」
こくこく、と頷き、黎は続ける。
「ルシファーには生い立ちとか、これまでの経緯なんかを洗いざらい吐かされてな。いや、あんなもんに逆らう勇気がなかっただけではあるんだが」
「正直慣れないと怖いものな。長い銀髪に切れ長の赤い瞳。美形なんだが、威圧感が…」
少し嫌そうな顔をして、うんうんと黎がうなずく。
「その時に、「君、名前は?」と聞かれてな。フルネームを答えたんだが...」
「...ルシファー殿だろ?あの方の事だから…
―――長い。君の名前、非常に呼びにくいから…そうだ。レイにしよう。
―――文字は「黎」ね。
―――気に入ったかい?気に入っただろう。
―――なにせ、今この場で考えたにしては傑作だからね!
と勝手に名前を付けられでもしたのではないか?」
「......すごいな。その通りだ。一言一句違わんぞ......」
「ははは、流石は占い師殿だ!それにしても、また豪快な御仁だな」
「それ、ロンが言うのか...?」
顔を見合わせて、ははは、と笑う。
「豪快だし、妙にチャラくて押しが強い人物だが、あれで大人物だからな。魔界のアイドルだし」
「そうなのか?」
ほう、とロンが眉を上げる。
「私の眼から見ても、大したイケメンというやつだ」
「ほほう!貴殿のお眼鏡にかなうとは!ぜひ一度お目にかかりたいものだな!」
「やめとけやめとけ。人間があの方に会うことがあるとすれば、それこそ世界を揺るがしたような大罪人だけだぞ」
「むむむ…それは残念だ。さぞ美しいのだろうが…」
むう、と腕を組み、眉を下げて残念そうにするロン。
ははは、と二人で苦笑した。
「…黎殿のその長髪も、大方ルシファー殿にでも憧れたのではないか?」
魔界には、やたらと長髪の人物が多い。
何故なのか、と一度問うたことがあった。
『え?そりゃあ、我らがルシファー様に憧れてだよ!』
その時はそんな返答があったのだ。
「なっ……な、何故それを……」
言い当てられた驚愕に目を見開き、慌ててぐりんとこちらを向く黎。
魔界勢は大体そうだろうよ、と私は笑う。
「くそ、本当ににあでりーはやりづらいな…子供扱いされるというか…」
こほん、と咳ばらいを一つ。
赤くなった耳は、見なかったことにしてやるのが大人の女性というものだろう。
言いたそうにうずうずしている悪い大人を、カウンターの下でちょいちょいと突いて諫める。
「まぁ、それで魔界やら冥界やらのルールを叩き込まれてな。死神として働き始めた...というのが、俺の生い立ちだ」
「成程なぁ...。なかなか壮絶だが、最終的に良き人物と出会えたのだな」、と。
ロンは空になったグラスを揺らしながら呟いた。
「...ほれ、ロン殿」
「おっと、これはすまんな、あでりー殿」
琥珀色の液体を、並々注いでやる。
「美人にお酌をされるというのは嬉しいものだな。…お、おお?また貴殿らしからぬ...」
グラスのふち、ぎりぎりまで注がれたウィスキーに、嬉しいような、困惑したような、微妙な表情を浮かべるロンに、私はにやりと笑って言ってやる。
「何、次は貴殿の番だろう?であれば、しっかりと口を湿らせておいてもらわねば困るのでな」
そこに乗っかって追撃を掛ける者がいた。
勿論、今しがた話をした人物。黎だ。
「そうだぞ。そういうロンはどうなんだ?」
「おっと…これは一本取られたな!ははは!」
彼は、額をぺちんと手のひらで叩くと、呵々と笑った。